第40回 電車の遅れが瞬時にわかる
はじめまして、デザイン本部の柴田です。
私は、電車や飛行機といった公共交通機関の情報のデザインを担当しています。「情報のデザイン」というとピンとこないかもしれませんが、駅や空港で見かける電子看板と言えばイメージしやすいでしょうか?この電子看板(正式には「デジタルサイネージ」といいます)、駅や空港などで利用が広がっていて、今注目されているんです。
現在、駅では液晶ディスプレイを使って、次の列車の案内や企業の広告などを発信しています。今回は電車の遅れに関する情報を路線図を使って案内するディスプレイにスポットをあててみたいと思います。
これまで、突発的な事故などの情報に関しては、日本語の音声や文章のみで利用者へ伝えられるというのが一般的でした。これからご紹介するディスプレイは、電車の遅れに関する文字情報をわかりやすい路線図に変換して表示するシステムです。このディスプレイを見れば、日本語がわからない人や音が聞こえない人でも、また放送が聞き取りにくい状況でも、利用者は自分のペースで運転状況を把握することができるようになります。
電車の遅れに関する情報発信といえば、下の写真(図1)のような表示器をご覧になったことがありますか?これは文章による情報がテレビのテロップのように流れる表示器です。特に関東の鉄道会社の駅の改札やホームでよく見かけると思います。
![[写真]JR東日本の異常時案内に情報がテレビテロップのように流れている [写真]JR東日本の異常時案内に情報がテレビテロップのように流れている](http://jkk.boxerblog.com/photos/uncategorized/2008/04/18/uni_40_1.jpg)
(図1)テロップのような異常時案内(JR東日本)
このディスプレイは、文字を大きく表示でき、利用者に正しく情報を伝えることのできる優れものです。
ただ注文をつけるとするならば、設置場所に配慮が必要でしょう。このディスプレイが良く設置されている改札付近では、利用者は急いで電車に乗ることに夢中で、立ち止まってこの文章を読んでいる時間はありません。「何か遅れてるな」とは思うのだけど、なかなか立ち止まって全部読む気にはなれないでしょう。
また、じっくり読んでもらえない原因としてもう一つ考えられるのは、利用者がその情報に興味があるかどうかわからないのに、いきなり詳細な説明をしてしまっている、という点かもしれません。こういった表示器は鉄道会社と利用者のコミュニケーションを支えるものなのですから、やっぱり「こんな話があるんだけど・・・(詳しく知りたい?)」と、まずは概要を伝えるべきだと思うのです。概要がわかれば、興味のある人は詳しく聞くし、興味のない人は立ち去ることができる。つまり、その情報をしっかりと取得するかどうか、価値の判断ができるということです。
では、次にこちらをご覧ください(図2)。これが冒頭でお話した、路線図を使って電車の遅れをお知らせするディスプレイです。![[イラスト]JR東日本の運行情報案内画面に遅延情報が表示されている [イラスト]JR東日本の運行情報案内画面に遅延情報が表示されている](http://jkk.boxerblog.com/photos/uncategorized/2008/04/18/uni_40_2.gif)
(図2)異常時案内用ディスプレイの運行情報案内画面(JR東日本)
このディスプレイの場合、概要に当たるのが路線図なのです。
先ほどのテロップのような表示器の場合、遅れに関する情報が1件だけならまだいいですが、2件、3件、ときには数十件と増えてしまうと、利用者は自分が乗る路線に遅れがあるかどうか、パッと見て判断することができません。パッと見た瞬間に、ほとんどの情報は隠れてしまっていて見えないからです。しかし、路線図であればそんなことはありません。遅れの情報が1件であっても数十件であっても、必ず一覧表示をすることができます。
もしかしたら、細かな情報は伝わりづらいかもしれません。でもそれでもいいんです。何となく「自分の行く方向に遅れがあるかどうか、わかればいいや」という人にとっては路線図をパっと見て得られた情報で十分ですし、もっと詳細が知りたければ、路線図に近づいて見たり、文字情報を見たりして、正しい情報を掴んでもらうことができます。繰り返しますが、ポイントははじめに「こんな情報があるんだけど・・・」と概要を伝えることなのです。
![[写真]JR新宿駅において駅利用者に注目される異常時案内用ディスプレイ [写真]JR新宿駅において駅利用者に注目される異常時案内用ディスプレイ](http://jkk.boxerblog.com/photos/uncategorized/2008/04/18/uni_40_3.jpg)
(図3)駅利用者に注目される異常時案内用ディスプレイ(JR新宿駅)
このように、これまでは把握することが難しかった情報を目に見えるようにすることで、より多くの人が現在起きていることの全体像を把握できるようなり、移動に関する判断を自分で行えるようになります。
想像してみてください。電車が止まっても、大勢の人が秩序だった行動を取れたらそれはすごいことです。駅員さんと利用者とのトラブルもなくなるでしょうし、駅員さんは気持ちにゆとりがもてるので、本当にサポートを必要としている人に対して、より丁寧に応対できるでしょう。駅員さんに聞きたいことがあるけれど、何となく面倒くさくて聞かなくて、結局わからなくてフラストレーションがたまってしまう・・・というような悪循環もなくなるでしょう。
ちょっと地味かもしれませんが、これからの快適な駅の姿ってこういうことなのかなって思っています。
