第30回 ペルソナ(仮想対象ユーザー)を使ったデザイン(前編)
はじめまして、デザイン本部の山寺です。私は、日立グループの製品が使いやすくなるように、ユーザーインターフェースのデザインをしているものです。
「第28回 ユーザーが操作している様子を見たことがありますか?」で本宮が、ユーザビリティについて書いていましたが、今回はこのユーザビリティを向上するための取り組みの一つをご紹介します。
ユーザビリティを向上するという場合、「ユーザーに配慮する」「ユーザー視点で考える」というようなことがよくいわれます。このときに、「ユーザーってどんな人?」「その人は何のためにシステムを使うの?」と考えることがとても大切です。
説明のために、ちょっと例え話をしたいと思います。
誰かがあなたに「今週末、山田さんに上着を買ってきて」と頼んだとします。あなたは、山田さんがどんな人か知りません。また、何のために上着が必要なのかも聞いていません。これでは、どんな服を買っていいかわからないでしょう。
山田さんの体格や性別はもちろん、服の好みや、どのようなときに着るのか、そのときは暑いのか寒いのか、そのときに身につけている他の服はどんなものなのか、そういったことを聞いておかないと、山田さんが満足する服を買ってくることはできません。そして、山田さんが、どのような人で、何のために上着を買いたいのかを理解して、初めて服を選ぶことができると思います(他にファッションセンスなども必要ですが)。
ユーザーインターフェースのデザインについても同じことがいえます。
例えば、「株のトレーディングシステムのユーザーインターフェースをデザインしてください」と言われて、「はい、わかりました」と言ってデザインを始められる人はいません。どんな人が何のために使うのかをきちんと理解しないと、ユーザーインターフェースをデザインすることはできません。以下の2タイプの人が使うシステムでは、ユーザーインターフェースの考え方や必要な機能がまったく違ってくるからです。
- 株の知識が豊富で、常に株式市場の動向を見つめていて、一瞬のタイミングをねらっているような人が使うシステム
- 最近定年退職をして、「資金運用をしないと」という思いに駆られて、自宅のパソコンから恐る恐る、初めて株の注文を出すような人が使うシステム
使う人が違えば、必要な仕様、適したユーザーインターフェースが違ってくるので、システムを開発するときには、ユーザーがどのような人かを明確にして仕様を検討する必要があります。このとき、ユーザーがどのような人かを明確にして、それをシステム開発に関係する人たちで共有する方法の一つが、「ペルソナ」を使うというものです。
「ペルソナ」というデザインのツールを最初に提示したアラン・クーパーによると、ペルソナとは「本物の人間ではないけれど、デザインのプロセスの過程で本物の人間の代わりになるものだ。それは実際のユーザーの仮説的な原型だ」としています。この架空のターゲットユーザーであるペルソナは、開発プロセスの中で、関係者が共通のイメージを持つために使われます。さらに、ペルソナには年齢、性別、職業、家族構成、居住地、趣味嗜好、性格などを設定します。
ペルソナを設定すると、
- このシステムをこの人はスムーズに使いこなせるか
- ある機能がこの人にとって本当に必要かどうか
などの議論を一貫した基準で行うことができます。
逆にペルソナを設定しないと、
- 開発担当者が個別にユーザーのスキルを想定して作るので、一貫性のないユーザーインターフェースになる
- 必要な機能とそうでない機能の見分けがつかずに、載せられるだけの機能を載せようとする
などの問題が起こってしまいます。
次回は、具体的なペルソナとはどのようなものかご紹介します。

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